扶養に入っている女性が年間所得103万円、130万円の壁を越えてしまうとどうなるのか?の詳細

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扶養に入っている女性が年間所得103万円、130万円の壁を越えてしまうとどうなるのか?

扶養範囲以上の年収

夫婦共働きが当たり前となりつつあります。しかし、夫のいる女性の労働環境は厳しくパートタイムで働く女性が圧倒的多数を占めています。

パートで働く女性の多くは税制、(夫の職場から受け取れる)配偶者手当など、「実利」を考えていわゆる「扶養範囲内」での労働を選ぶ傾向にあります。

この扶養範囲(年間130万円)を超えたらどのくらいの実損があるのでしょう?

また、夫の職場の規定によっては妻の年間所得が130万円以内であっても扶養認定が取り消されるケースもあります。

もしも、被扶養者でなくなった場合、どのような負担が発生するのか、また負担額について説明していきます。

現代女性の働き方

近年は女性も高学歴傾向にあり、20代で正社員として就職します。

結婚後も多くの女性は働き続けることを希望し、女性の育休も定着化しつつありますが、いまだ多くの女性が出産や結婚、夫の転勤などのライフイベントを機に離職か現職の継続かの選択に悩まされます。悩んだ末に離職する女性も数多くいます。

年代別労働力率画像

出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 平成23年版」

こちらのグラフは年齢別の女性労働率の推移です。

25〜29歳の労働率は過去より現代のほうが多くなっています。これは晩婚化によるものの他、結婚による離職をする女性が減ったことも原因の一つでしょう。

しかし、育児期には離職をする女性が多い傾向にあり、いわゆる「M字カーブ」といわれる曲線を描いています。

就労状況が年収にもたらす影響

こちらは三菱UFJリサーチが行ったアンケートの結果です。

女性の場合、再就職では70%近くが年収150万円以下になります。再就職、転職に伴って所得が減る状況がこのグラフから分かります。

男女別就労状況の画像

出典:平成20年度厚生労働省委託調査「両立支援にかかる諸問題に関する総合的調査研究 アンケート調査報告概要」

同調査では正社員で働く女性の86.5%、契約社員の女性66.3%が正社員で働くことを希望しています。一方パート女性は56.9%、専業主婦の45.8%がパートでの労働を希望する割合が多くなります。

この数字から見えてくるのが、いわゆる「103万円の壁、130万円の壁」という働きすぎることによって生じる負担を回避したいという女性側の思いです。

この女性側の思いが顕著に表れたグラフが以下になります。

雇用所得の分布画像

出典:内閣府男女共同参画白局「男女共同参画白書 平成25年版」

20代では単に年収にばらつきがあるだけですが、30代以降は100万円の所得に集中しているのが分かります。

これは、非正規に甘んじていること、また非正規として働くならば、「恩恵にあずかれる(被扶養者として国民年金3号被保険者、夫の扶養家族として健康保険料を払わない)」働き方を女性が意図的に選択していることを表しています。

103万の壁と130万の壁について考える

103万円の壁って?

以下に妻の所得と払うべき税金についての表をまとめました。

妻の年収と税金の関係の画像

世帯所得を考えるときの、妻の年収と税金の関係

■住民税負担はそんなに高くない
103万円で負担が増えてくるのは市県民税(住民税)です。妻本人が払う住民税は所得控除後に県民税4%、市民税6%となりますので、実際の負担額自体は大きくありません。

■児童手当がもらえなくなる可能性がある
ただ、夫の勤め先によっては妻の年収が100万円程度(企業により規定は違います。ちなみに国家公務員の場合は130万円)になると児童手当が出なくなります。

児童手当金額が5,000円ならば単純計算で6万円マイナスという事になります。

パート労働の妻と社会保険の壁

パートの妻が130万を超える場合には大きく2つの働き方が想定できます。

厚生年金に加入できる働き方の場合とパートを掛け持ちやパート+副業をして所得が増えた場合です。

パート労働者が厚生年金に加入できる条件としては以下の通りになります。

  • 1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること
  • 1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること。

企業にとって正社員も含め人件費はコストです。非正規で人材を賄うメリットはコストカットですので、「パート労働者の社会保険は余分なコスト」であるととらえる経営者も数多くいます。

そのため、企業側は「扶養範囲で働ける!」と女性側に有利な面を謳い、所得が130万を超えない、かつ労働条件を社会保険加入未満に抑えて募集をしているのが現状です。

130万円の壁を超えるとどうなる?

前置きが少し長くなりましたが、130万円を超えてしまうと実際どうなるのでしょう?

妻の立場の人が130万以上の所得を得た場合、以下の保険料を負担しなければいけなくなります。

●国民年金or厚生年金
●健康保険

年金保険料の負担額を試算してみよう

まずはじめに年金部分について負担額を計算していきます。

ここではギリギリ扶養に入れない年間所得130万円を想定します。パートの場合ボーナスを受け取れることはほとんどありませんので、単純に12カ月で割った金額になります。

130万円÷12カ月≒108,334円で負担額を試算していきます。

≪国民年金の場合≫
それまで夫の扶養親族として3号被保険者だったのが1号被保険者になります。1号被保険者は所得に関係なく保険料は一律です。

16,260円/月x12カ月=195,120円(平成28年4月~平成29年3月までの金額)

≪厚生年金の場合≫
標準報酬3級となり本人負担額は、

9,805円/月x12カ月=117,660円(標準報酬3級の本人負担額。平成27年9月以降)

国民年金よりも安いのは厚生年金の場合企業が半額負担をしているためです。

健康保険料の負担額を試算してみよう

■会社の社会保険(協会けんぽ)に加入の場合
5,478円/月12カ月=65,736(東京都40歳未満の場合)
こちらも企業が半額負担をします。

≪国民健康保険の場合≫

国民健康保険の場合一概に試算で出すことができません。

と、いうのも国民健康保険の算定に関しては「世帯所得」によっては同じ所得の単身者では受けられる減額制度が受けられない場合があるからです。

「夫は厚生年金で別の健康保険だから私は関係ないわ!」と思うのは大間違い!夫が国民健康保険(自営)であろうが厚生年金(会社員)、共済年金(公務員)であろうが関係なくその世帯の所得によって払う保険料が変わってきます。

◆実例
実際に1人分の所得と世帯所得の保険料にどのぐらいの隔たりがあるのでしょう?平成27年度3月に扶養取り消しになったときの計算シュミレーションです。

妻・・・前年度所得125万円(前年度所得は扶養範囲内で労働していた)
夫・・・前年度所得640万円
妻だけの所得で計算した場合の国民健康保険料・・・約60,000円
実際に請求される(世帯所得で計算した)国民健康保険料・・・約102,000円

■妻の所得が低いだけでは受けられない軽減制度
国民健康保険料は保険税という地方税です。これには低所得世帯に対して軽減制度があります。

その軽減を受けられるかどうかの計算の際に「世帯所得」が関係してきます。

妻本人の所得が低いならば軽減を受けられる所得に該当しますが、世帯所得が基準以上になるため全額の支払いとなります。その法的根拠が民法にあります。

■民法で規定されている夫婦扶助
民法752条の条文では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定されています。市職員の説明によると、「妻の所得が低くても夫がそれを助けるのが「夫婦扶助」で、国民健康保険料も妻の所得が低いならば夫と同一生計であるから全額負担になります。」とのことでした。

■国民健康保険税は世帯主が払う
国民健康保険税は世帯ごとに課税されます。そして、納税義務者は世帯主(多くの場合は夫)になります。

もし世帯主が国民健康保険の加入者(被保険者)でなくても、同じ世帯の妻が国保の対象者であれば世帯主が納税義務者となり、納税通知も夫宛てに送られます。このような世帯主を「擬制世帯主」といいます。

このように国民健康保険に妻が加入する場合世帯の所得によって負担額が変わるため、一概に130万を超えた妻が〇円以上稼げばプラスになる!という明確な金額提示ができないのです。

年間所得130万以下でも扶養を取り消されるケース

扶養に入る場合年間所得が130万円以下であれば大丈夫、と思っている方は多くいますが、130万以下でも取り消されるケースがあります。

企業の規定によって異なりますが、妻が扶養に入る主な条件は以下の通りです。

  • ほかの健康保険、社会保険に加入していない
  • 失業給付が基準額(日額3,612円)以下
  • 一年間の所得が130万以下(「1年間」とは、暦年(1~12月)収入ではなく、今現在の収入を得た月から1年間)

※ 月収入108,334円(130万円÷12ヶ月≒108,333)以下(通勤手当や税金、残業代を含む)

この4つ目の規定がある場合、実際はシフトによって月額所得が上下し、結果的に年間130万以下しか所得のない場合でも扶養認定を取り消されます。

そして、多くの場合、遡及(その事実があった日にさかのぼって)取り消されます。

そうなると、扶養手当の返納、国民年金、健康保険を一気に何か月分も負担するなどの負担が発生します。

扶養を取り消された場合にできる負担減

■国民年金の前納制度
国民年金は、半年分、1年分(2年分)を前納することで割引を受けられます。

口座振替前納料金表の画像

出典:日本年金機構HP「国民年金前納割引制度(口座振替 前納)について」

また、クレジットカード払いも可能ですので、微々たるものですがクレジットカードポイントをお使いの方には1%程度のポイントバックを受けられます。(カード規定による)

■確定申告を行う
扶養を外れた、パートの掛け持ちをして国民年金、国民健康保険を支払っているという人は確定申告をしてください。

国民年金、国民健康保険料は全額所得控除の対象になります。また、「実際に支払った人」が確定申告を行います。

妻の年金、健康保険でも夫が払った場合夫が確定申告を行うことになります。所得の多い夫の確定申告を行ったほうが還付を多く受けられる可能性があります。

現在は、インターネットで申告書を作成、郵送で申告できますので、源泉徴収票が届いたら夫婦で申告書の作成を行ってみてください。

まとめ

下に簡単にですがこれまでの話に沿った手取り所得のグラフを記載しています。

◇妻の手取りと所得の関係
妻の手取りと所得の関係の画像

夫婦二人で生計を維持する場合、目先の得を取ってかえって損失を被るのは避けたいことです。そういった意味では現状の制度を利用し、「妻」の恩恵を受けることも悪くありません。

一方、平成28年10月以降時短労働者への社会保険、健康保険が拡大されます。

対象者は、以下の方になります。

●週の労働時間が20時間以上かつ勤務が1年以上見込まれるもの

●賃金が月額88,000円以上

ただこちらも特定適用事業所(厚生年金の被保険者が500人以上)の企業ですので、社会保険に新たに加入できる女性はラッキー、といったところかもしれません。

制度が変わるたびに女性はその働き方を変化させてきました。

女性も、その夫も常に情報を集めることが大切です。また「働くこととの意味」(お金だけではない生きがい)を考えて夫婦で幸せな家庭を作る方法を考えていかなければいけないのです。

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